理事長の挨拶理事長挨拶
日本シェーグレン症候群学会 理事長
中村 英樹 (日本大学医学部内科学系血液膠原病内科学分野) 2024年10月より札幌医科大学高橋裕樹教授の後任として理事長を引き継ぎました日本大学の中村英樹です。私自身、大学院生の頃より約30年に亘って、シェーグレン症候群の病態解明の基礎研究や臨床研究に携わってきた立場から、今回の理事長拝命は光栄に思うのと同時に、患者さんに還元できる研究や新しい治療をどのように展開してゆくか熟慮が必要と考えています。私が日本シェーグレン症候群学会に参加したのは長崎大学の江口勝美先生が会長を主宰された2000年の第10回からとなりますが、この学会を通じて、多くの最新の知識を得ることができたことと、多くの施設の先生方との学術的な交流を持つことができたと思います。現在本学会はシェーグレン症候群とIgG4関連疾患の両者を扱っていますが、ここで大きな刺激を受けるのは膠原病内科以外の内科、眼科、皮膚科、耳鼻咽喉科、歯科口腔外科、小児科、放射線科など複数の診療科や病理、再生医療分野など基礎系の教室の先生方より多面的な発表や討論を聞くことができる点だと思います。このように臨床面では成人科から小児科までを幅広く包含し、基礎系の先生方からは、動物モデルや再生医療の最新の情報を知ることにより、臨床系と基礎系の学術的交流が横断的に可能となっている数少ない学会だと思います。 このように本学会はシェーグレン症候群とIgG4関連疾患の最新の病態および診療の情報が集まる場であり、ここに参加する研究者の発表や交流を通してふたつの疾患の理解の発展に寄与しています。またいくつかの小委員会を有しており、シェーグレン症候群の診断と治療マニュアル、小児シェーグレン症候群診断基準、厚労科研費自己免疫疾患に関する調査研究班「診療ガイドライン作成」に関する委員会活動もおこなっています。さらに近年では「患者の声」が果たす役割が大きくなっています。私がシェーグレン患者会事務局代表として患者会をサポートしている立場でもあり、患者会の声をシェーグレン白書などを通して本学会に反映することにより、従来の学会活動からだけでは汲み取れないような新たな課題発掘にも役立ててゆきたいと考えています。また、シェーグレン症候群については、欧米より『シェーグレン病』という疾患名を推奨する声が高まっており、この動向を本学会でも注視しています。 治療に関しては、シェーグレン症候群の腺症状や倦怠感に対する治療は限られていて、IgG4関連疾患でもグルココルチコイドと一部の免疫抑制剤使用以外は有効な治療薬が無いのが現状でした。しかしながらここ1-2年で、両疾患ともに急速に分子標的薬などの治験が本邦でも進んでおり、今後関節リウマチで見られたような治療の変革期が来る可能性を秘めています。本学会での活動を最終的には患者さんの生活の質の改善に役立てたいと思いますので、多くの若手の会員の皆様にも参加頂き、基礎・臨床の両面から活発な議論を通じて本学会を盛り上げて頂ければ幸いです。 |